
花粉症の季節になると、目のかゆみ、充血、涙目に悩まされる方は非常に多くいらっしゃいます。
これらの症状を引き起こしているのが「アレルギー性結膜炎」です。日本では人口の約20〜30%が罹患していると推定される、最も患者数の多い眼疾患のひとつです。
花粉症というと鼻水やくしゃみのイメージが強く耳鼻科を受診する方が多いですが、目の症状がつらい場合は眼科での治療がより効果的です。
この記事では、アレルギー性結膜炎の原因・種類・症状、眼科での治療法と市販薬の違い、日常のセルフケア、そして放置した場合のリスクまで詳しく解説します。
アレルギー性結膜炎の原因とメカニズム
アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が目の表面の結膜に付着することで起こります。
結膜の中にある免疫細胞(肥満細胞)がアレルゲンを異物と認識し、ヒスタミンなどの化学物質を大量に放出します。このヒスタミンがかゆみの神経を刺激し、血管を拡張させて充血を引き起こし、涙や目やにの分泌を促すのです。
ここで目をこすると、こする刺激によって肥満細胞からさらにヒスタミンが放出され、かゆみが一層強まるという悪循環が生じます。「こすればこするほどかゆくなる」のは、このメカニズムが原因です。

アレルギー性結膜炎の種類
- 季節性アレルギー性結膜炎
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スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネ科の植物などの花粉が原因で、花粉の飛散する特定の時期に症状が出ます。
日本ではスギ花粉症が最も多く、毎年2〜4月にピークを迎えます。ヒノキは3〜5月、ブタクサは8〜10月に飛散するため、「春だけでなく秋にも目がかゆい」という方は複数の花粉にアレルギーがある可能性があります。
- 通年性アレルギー性結膜炎
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ハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛やフケが原因で、一年を通じて症状が続きます。梅雨時期や秋口にダニの繁殖がピークを迎えるため、その時期に悪化する傾向があります。
寝室環境(布団・カーペット・ぬいぐるみなど)が症状を大きく左右します。
- 春季カタル(重症型)
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アレルギー性結膜炎が重症化した病態で、特に学童期の男子に多く見られます。まぶたの裏側に石垣状の巨大乳頭ができ、強いかゆみ、白い粘り気のある目やに、異物感を伴います。
角膜にびらんや盾状潰瘍ができると視力に影響が出るため、通常の抗アレルギー薬だけでなく免疫抑制点眼薬を含む専門的な治療が必要です。

主な症状
最も特徴的なのは目のかゆみで、患者さんの大半が訴えます。かゆみは両目に出ることが多いですが、花粉が片方の目だけに入った場合は片目のみの症状も起こりえます。
そのほか、ゴロゴロとした異物感、白目の充血、水っぽい・白っぽい目やに、涙が増える、まぶたの腫れ、目がしょぼしょぼする、光がまぶしく感じるといった症状が見られます。鼻水・くしゃみ・鼻づまりを併発している方は、アレルギー性鼻炎との同時発症(アレルギー性鼻結膜炎)の状態です。

花粉症の目の症状は眼科?耳鼻科?
鼻水やくしゃみがメインの方は耳鼻科、目のかゆみや充血がメインの方は眼科が適しています。もちろん両方受診しても問題ありません。
眼科を受診するメリットは、結膜や角膜の状態を細隙灯顕微鏡で直接観察し、症状の重症度を正確に評価した上で最適な点眼薬を段階的に処方できることです。市販の目薬で効果が不十分な方、ステロイド点眼が必要な方、コンタクトレンズ使用者の方は、眼科での管理が特に重要です。
眼科での治療法
- 点眼薬による治療「初期療法」が最大のポイント
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治療の柱は抗アレルギー点眼薬です。ヒスタミンの放出を抑える「メディエーター遊離抑制薬」と、放出されたヒスタミンの作用をブロックする「抗ヒスタミン薬」の2種類があり、症状の程度に応じて使い分けます。
最も効果的なのが「初期療法」です。花粉が本格飛散し始める約2週間前から抗アレルギー点眼薬を使い始めると、肥満細胞が安定した状態でシーズンに入れるため、症状が大幅に軽減されることが臨床研究で確認されています。豊田市を含む東海地方ではスギ花粉は例年2月上旬頃から飛び始めるため、1月下旬頃からの開始が目安です。
症状が中等度以上の場合はステロイド点眼薬を併用します。強力な抗炎症効果がありますが、長期使用すると眼圧が上昇する「ステロイド緑内障」のリスクがあるため、必ず眼科医の管理下で使用してください。春季カタルなどの重症例には免疫抑制点眼薬(タクロリムス・シクロスポリン)を用いることもあります。
- 市販の目薬と処方薬はどう違う?
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市販の抗アレルギー目薬は軽症には有効ですが、処方薬と比べて有効成分の濃度が低いものが多く、中等症以上では十分な効果が得られないことがあります。
特に注意したいのが市販の「充血除去目薬」(血管収縮剤入り)です。一時的に赤みは取れますが、アレルギーの炎症を治す効果はなく、使用中止後にリバウンドでかえって充血が悪化する「薬剤性充血」を起こすことがあります。
アレルギーには充血除去成分ではなく、抗アレルギー成分が入った目薬を選びましょう。市販薬で数日使っても改善しない場合は、眼科の処方薬に切り替えることで快適に過ごせるようになるケースが多くあります。
豊田市周辺の花粉カレンダー
効果的な初期療法のために、お住まいの地域の花粉飛散時期を把握しておくことが大切です。豊田市を含む東海地方の主な飛散スケジュールは次の通りです。スギが2月上旬〜4月上旬、ヒノキが3月中旬〜5月上旬、イネ科(カモガヤなど)が5月〜7月、ブタクサが8月〜10月頃です。
「スギが終わったのにまだかゆい」という方はヒノキ、秋にかゆい方はブタクサが原因の可能性があります。原因を特定したい場合は、少量の血液で複数のアレルゲンを一度に調べられるアレルギー検査※をおすすめしています。原因が分かれば初期療法の最適な開始時期や生活環境の改善策も明確になります。
※当院はアレルギー検査を行っていません。
日常生活での予防・セルフケア
花粉シーズンの基本対策として、花粉対策メガネやサングラスの着用、帰宅後の洗顔と手洗い、洗濯物の室内干し、防腐剤フリーの人工涙液による花粉の洗い流しが有効です。通年性の場合は、こまめな掃除・換気、布団のダニ対策カバー使用、ぬいぐるみやカーペットの管理が効果的です。
コンタクトレンズ使用者は花粉がレンズ表面に付着してアレルゲンへの曝露時間が長くなるため、花粉シーズンだけワンデータイプに切り替えるかメガネに切り替えることも検討してください。
かゆみを感じたときに最も大切なのは「こすらない」ことです。冷やした清潔なタオルをまぶたに当てる、人工涙液でアレルゲンを洗い流す、抗アレルギー目薬をさす――この3つが応急処置の基本です。
水道水で頻繁に目を洗うと塩素が角膜を傷つけ、涙の保護膜を洗い流してしまうため逆効果です。目を洗う際は必ず防腐剤フリーの人工涙液を使ってください。

放置するとどうなる?アレルギー性結膜炎を見過ごすリスク
- 角膜びらん・角膜感染症
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こする刺激で角膜にびらん(浅い傷)ができ、そこから細菌が侵入すると角膜感染症を合併します。角膜の混濁が残れば永続的な視力障害の原因になります。
- 円錐角膜の進行
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目をこする習慣は、角膜が前方に円錐状に突出する「円錐角膜」の発症・進行因子です。進行するとメガネやソフトコンタクトでの矯正ができなくなり、最終的に角膜移植が検討されることもあります。特にアトピー性皮膚炎をお持ちの方は円錐角膜のリスクが高いため、かゆみのコントロールが非常に重要です。
- 春季カタルの重症化
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春季カタルが重症化すると角膜に盾状潰瘍ができ、視力が大きく低下することがあります。治療が遅れるほど角膜に瘢痕(はんこん)が残りやすくなり、回復にも時間がかかります。
- ドライアイの悪化
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長期にわたる慢性炎症は、粘液を分泌する結膜の杯細胞を減少させ涙の質を低下させます。涙が不安定になるとドライアイが悪化し、ドライアイ自体がさらに炎症を助長するという悪循環が生まれます。

深見眼科での診察について
深見眼科では、細隙灯顕微鏡で結膜・角膜を詳細に観察し、アレルギー性結膜炎の重症度を正確に評価した上で、最適な点眼薬を処方します。軽症であれば抗アレルギー点眼薬のみ、中等症以上ではステロイド点眼薬を併用し、ステロイド使用中は定期的に眼圧をチェックして副作用の早期発見に努めます。
春季カタルや重症例には免疫抑制点眼薬を含めた専門治療を行い、角膜合併症の予防に注力します。花粉症の初期療法の開始時期やアレルギー検査※についても個別にアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。
※当院はアレルギー検査を行っていません。
まとめ
アレルギー性結膜炎は非常に身近な眼疾患ですが、適切な治療で症状を大幅にコントロールできます。最も効果的なのは花粉シーズン2週間前からの「初期療法」と「こすらない」習慣の徹底です。放置してこすり続けると、角膜びらん、円錐角膜、春季カタルの重症化、ドライアイの悪化など、視力に関わる深刻な合併症のリスクがあります。
「毎年のことだから仕方ない」と諦めず、ぜひ眼科での治療をご検討ください。花粉症の目の症状でお困りの方は、豊田市の深見眼科へお気軽にご来院ください。

