急激な視力低下で考えられること

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突然「急に視力が落ちた」「ものが見えにくくなった」という症状は、子どもから中高年まで誰にでも起こり得ます。

急な視力低下は、単なる目の使い過ぎや加齢による変化だけでなく、重大な目の病気が潜んでいる可能性があります。例えば、「物が二重に見える」「物がゆがんで見える」「視界の一部が暗く欠けて見える」「蚊のような黒い点(飛蚊症)が急に増えた」「急にまぶしく感じる」といった症状が現れることがあります。

視力低下の原因は多岐にわたり、片目だけに起こる場合と両目に起こる場合があります。片目のみ視力が低下してもう片方の目で補っていると、本人は異常に気づきにくいこともあります。原因を正確に突き止めるためにも、こうした症状に気付いたら早めに眼科で検査を受けることが大切です。

「目を酷使したことによる一時的な視力低下」と、治療が必要な深刻な視力低下とを見分けるポイントをまとめます。

次のチェックポイントに該当する場合は、単なる疲れ目ではなく何らかの病気が原因の可能性が高いです。十分な休息で改善しない場合は眼科受診を検討しましょう。

  • 休息で回復するか?
    • 長時間のスマホ・PC作業などによる一時的な視力低下であれば、目を休めることで通常は改善します。一晩寝ても視力が回復しない場合は注意が必要です。
  • 片目だけか?
    • 疲れ目によるかすみ目は通常両目に起こります。一方、網膜剥離や緑内障発作など病気の場合は片目だけ急に見えにくくなることがあります。片眼のみ異常を感じるときは早期に検査を受けましょう。
  • 光や浮遊物が見えるか?
    • 視界に突然光が閃いたり(光視症)、黒い点や糸くずのようなものが飛ぶ(飛蚊症)場合、網膜剥離や硝子体出血の前兆の可能性があります。こうした症状があれば緊急性が高いと考えましょう。
  • 痛みや充血を伴うか?
    • 単なる疲労で視力が落ちる場合、通常痛みや充血はありません。急激な視力低下に目の痛み・頭痛を伴う場合は急性緑内障発作などが疑われ、緊急治療が必要です。また目が赤く充血し強いかすみや眩しさを感じる場合はぶどう膜炎の可能性があります。
  • 持病や既往はあるか?
    • 糖尿病のある方は糖尿病網膜症による視力低下に注意が必要です。また強度近視の方は網膜剥離を起こしやすい傾向があります。ご自身のリスク要因がある場合、少しの視力変化でも早めに受診しましょう。

以上のポイントに一つでも当てはまる場合、急激な視力低下は深刻な眼科疾患が原因である可能性が高く、放置すると回復が困難になることがあります。早めに専門医の診察を受けましょう。

急な視力低下を生じる代表的な目の疾患には以下のようなものがあります。それぞれ症状の特徴や原因が異なります。気になる症状が当てはまる場合は、早急に眼科で検査・治療を受けることが重要です。

網膜剥離(もうまくはくり)

網膜剥離は、眼球の奥にある網膜が裂け目(網膜裂孔)を生じて剥がれてしまう病気です。

網膜はカメラのフィルムに相当し、ここが剥がれると視野の一部が黒く欠けたり、急激な視力低下が起こります。初期には飛蚊症(虫が飛ぶように見える)や視野の端に影がかかるなどの症状がありますが、網膜の中心部(黄斑)まで剥がれると一気に視力が落ちます。

網膜剥離は痛みを伴わないため気づきにくく、症状に気付いた時にはかなり進行していることも少なくありません。強度近視の方や中高年で発症しやすく、放置すると失明に至る恐れもある重篤な疾患です。治療は早期の手術(網膜を元に戻す手術)が必要になります。

加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)

加齢黄斑変性症は、加齢によって網膜の中心にある黄斑という部分に異常な血管の発生や出血・むくみが生じる病気です。

主に高齢者に発症し、ものがゆがんで見える、視界の中心が暗く見えにくい、色が判別しづらい、といった症状が現れます。進行すると中心部の視力低下が著しくなり、放置すれば視力の回復が困難になったり失明に至る可能性もあります。実際、黄斑変性症は欧米では成人の失明原因第1位であり、日本でも患者数が増加しています。

治療は網膜の新生血管の成長を抑える薬剤を眼球内に注射する「抗VEGF硝子体内注射」が主流で、早期発見と治療開始が視力維持の鍵となります。

緑内障(りょくないしょう)

緑内障は、眼球内の圧力(眼圧)が視神経を傷つけ、視野が狭くなっていく病気です。

日本における失明原因の第1位であり、自覚症状が出にくく少しずつ進行する慢性的な緑内障が多いですが、結果的に視力も低下してきます。特に初期は気づかないうちに視野欠損が進み、視力が落ちる頃にはかなり進行しているケースが多いです。治療せず放置すれば最終的に失明に至る可能性があります。

なお、突然の激しい眼痛・頭痛・嘔気を伴い急激に視力低下を起こす急性緑内障発作というタイプもあります。急性発作では数日で視神経が深刻なダメージを受けるため眼科の緊急処置が必要です。緑内障はいずれのタイプも早期発見・継続治療が重要で、点眼治療や手術で眼圧を下げ進行を遅らせます。

糖尿病網膜症・眼底出血(がんていしゅっけつ)

糖尿病網膜症は、糖尿病による高血糖で網膜の血管が傷み、出血や酸素不足による新生血管の発生を来す病気です。

初期には症状がほとんどありませんが、進行すると網膜に出血や黄斑浮腫(黄斑部のむくみ)が起こり視力低下を招きます。最終段階では脆い新生血管から大出血を起こしたり、網膜剥離を合併して失明につながる危険があります。糖尿病網膜症は日本人の中途失明原因の上位を占める怖い病気ですが、定期検査により進行を抑えることが可能です。網膜で出血が起こり硝子体という眼球内部に出血が広がると「硝子体出血」と呼ばれ、突然大量の黒い浮遊物や霧がかった視界になり、著しい視力低下を来します。

硝子体出血の主な原因は糖尿病網膜症のほか、網膜静脈閉塞症(網膜の血管の詰まり)や網膜剥離などです。出血が多い場合は硝子体手術で血液を除去し、加えて原因疾患への治療(レーザー凝固や注射など)が必要になります。糖尿病の方は内科での血糖コントロールと並行して定期的に眼科検査を受け、出血や網膜症の兆候を早期に発見することが何より重要です。

ぶどう膜炎(ぶどうまくえん)

ぶどう膜炎は、眼球内部の虹彩・毛様体・脈絡膜からなる「ぶどう膜」に炎症が起きる疾患です。

原因は様々で、サルコイドーシスやベーチェット病など免疫異常によるもの、ウイルス・細菌感染によるもの、原因不明のものがあります。症状としては視力低下のほか、視界のかすみ、眩しさ(羞明)、黒い点が飛ぶ、さらに目の充血や痛みなどが現れることが特徴です。炎症が強いと眼内の組織にダメージを与え、放置すると白内障や緑内障、網膜剥離などを引き起こし失明につながるケースもあります。

治療は原因に応じてステロイドの点眼・内服や免疫抑制剤、感染症ならば抗菌薬などを用います。再発を繰り返すことも多いため、継続して経過観察と治療を行うことが大切です。

上述したような疾患が原因の場合、急な視力低下を放置することは非常に危険です。それぞれの病気で適切な治療を受けずにいると、最悪の場合は片目あるいは両目の視力をほとんど失ってしまう可能性があります。

視力の著しい低下や失明は、読書やスマホ操作はもちろん、車の運転や仕事・家事など日常生活のあらゆる場面に支障をきたします。特に高齢者では転倒や事故のリスクが高まり、生活の質(QOL)が大きく低下します。またお子様の場合、視力が低下したままだと学業やスポーツへの影響は避けられません。

一度失われた視力を後から取り戻すことは難しいため、早めの対処で悪化を防ぐことが何より重要です。

急激な視力低下を感じたら、できるだけ早期に眼科で診察を受けることが大切です。症状が軽いうちに治療を開始できれば、視力の温存や回復の可能性が高まります。

逆に「様子を見よう」と放置していると、手遅れになって視力が回復不能になるケースも少なくありません。特に小児と高齢者では早期受診が重要です。小さなお子さんは自分の視力低下に気づきにくく、片目だけ見えづらい場合でも訴えられないことがあります。幼少期に片目の異常を放置すると、その目の発達が妨げられて弱視(視力が出ない状態)になる恐れもあります。保護者の方は学校の視力検査や家庭でのチェックで異常を感じたら、早めに眼科受診させてください。

一方、高齢者は「年だから仕方ない」「白内障だろう」と自己判断して受診が遅れがちです。しかし加齢黄斑変性や緑内障など、加齢による目の病気でも早期発見・治療により進行を食い止め、視力を保てる場合があります。中高年の方も定期的に眼科検診を受け、特に片目ずつの見え方に違和感がないかチェックする習慣が大切です。違和感を覚えたら迷わず専門医にご相談ください。

片目だけ急に見えにくいのはなぜでしょうか?

片目だけ視力が低下する場合、目の病気が片眼に起きている可能性があります。例えば網膜剥離や黄斑変性症、急性緑内障発作、片眼の白内障の進行などは片目ずつ発症しうる代表例です。もう一方の目が健常だと異常に気づきにくいですが、片目を手でふさいで比べると視野の欠けやぼやけに気づくことがあります。片眼のみの症状でも油断せず、早めに眼科で診察を受けましょう。

スマホの使い過ぎが原因で視力が急に低下することはありますか?

スマートフォンやパソコンの長時間使用は、目の疲労や一時的なピント調節不調を招き、一時的に視界がかすむ原因になります。いわゆるデジタル眼精疲労(眼疲労)により「急に視力が落ちた」と感じることはありますが、この場合は十分に休息を取れば回復するのが通常です。

ただし慢性的な酷使は近視の進行やドライアイの原因となり、強度近視は将来の網膜剥離リスクを高めます。スマホの見過ぎで生じる一時的な視力低下と侮らず、休息をとっても改善しない時は眼科医に相談してください。

視力低下が自然に治ることもありますか?

原因によります。単なる疲れ目であれば休養により自然回復しますが、病気が原因の視力低下は放置しても良くなりません。それどころか時間経過とともに悪化し、手遅れになるリスクがあります。症状が軽快したように見えても再発を繰り返す場合も要注意です。

特に網膜剥離の前兆症状(飛蚊症や光が見える等)は、一時的に感じなくなっても網膜に穴が開いた状態が残っていることがあります。違和感があれば早めに眼科を受診し、自然治癒を期待せず専門的な検査・治療を受けるようにしましょう。

当院では、急な視力低下に関するご相談・診察を随時受け付けております。経験豊富な眼科専門医が在籍し、必要な精密検査(視力・視野検査、眼底検査等)を速やかに行います。検査の結果に基づき、適切な治療方針をご提案いたします。

網膜剥離など緊急を要する疾患は速やかに高次医療機関と連携して対応し、加齢黄斑変性症の抗VEGF注射や糖尿病網膜症のレーザー治療・経過管理、緑内障の眼圧コントロールなど幅広く対応しています。小さなお子様の近視進行抑制から緑内障の早期発見、糖尿病による網膜症や加齢黄斑変性症まで、ご家族みんなのかかりつけ医としてあらゆる世代の目の健康をサポートいたします。

視力低下が「おかしいな」と感じたら、お気軽にご相談ください。当院ではWEB予約にも対応しておりますので、待ち時間短縮のためご活用いただけます。早期の受診と適切な治療で、大切な目の健康と視力を一緒に守っていきましょう。

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